ラテン語の動詞の「時制」をシンプルにまとめた図 (活用語尾を整理した覚え方のコツ)
ラテン語には時制が6つある。これらの違いを,簡単に俯瞰・記憶する方法。
ラテン語の入門者にとって,時制の学習を難しくしている原因は色々ある:
- さらに,説明の際には,ラテン語から派生したロマンス諸語の文法用語で代用されることもあり,混乱しやすい。
しかし実際には,非常にシンプルに把握できる。
下記の図を見ればよい。
ラテン語の時制を整理・要約した図
各時制ごとに「特徴的な語尾」も付記。活用語尾を記憶しやすくなる。
また,時制の名称には,ロマンス語(フランス語やスペイン語,イタリア語)の活用表で使用されるものを併記。
■完了相■ ある時点までに終わった動作 era i eri 過去完了 完了 未来完了 (大過去,前過去)(点過去,単純過去) (前未来) ←―┐ ←―┐ ←―┐ ――――┼――――――――┼―――――――――┼――― 未完了過去 現在 未来 (半過去,線過去) ba bi/e ■未完了相■ ある時点に注目した状態
これだけ。シンプルに整理した形で把握できる。
まず,いま現在を基準に前なのか後なのかで,過去・未来が生まれる。
さらに,動作が終わったのか終わってないのかで,完了相と未完了相が生まれる。合計6つ。
インド・ヨーロッパ諸語で動詞変化を学習する時には,活用形ごとに記憶やイメージが分散しがちだ。統一して覚えよう。
ラテン語動詞変化に関する文法用語の英訳
日本語よりも英語のほうが圧倒的に情報量が多い。調査用に必要。
態 (voice)
- 能動態:active
- 受動態:passive
法 (mood)
- 直説法:indicative
- 接続法:conjunctive, subjunctive(仮定法)
- ラテン語の場合は「条件法」ではない
相 (aspect)
- 未完了:imperfect
- 完了:perfect
- 命令:imperative
時制 (tense)
- 未完了相:
- 現在:present
- 未完了過去:imperfect
- 未来:future
- 完了相:
- 過去完了,前過去:pluperfect
- 完了:perfect
- 未来完了:future perfect
その他
- 不定詞(不定法):infinitive
- 現在分詞:present participle(現在能動分詞,〜する〜)
- 完了分詞,過去分詞:past participle(過去受動分詞,〜された〜)
- 未来分詞:future participle(未来能動分詞,〜する予定の〜)
- 動名詞:gerund(ゲルンディウム,動詞の能動態の名詞形,〜すること)
- 動形容詞:gerundive(ゲルンディーウゥム,動詞の受動態の形容詞形,〜されるべき)
- 目的分詞:spinum(スピーヌム,名詞型活用,目的を表す副詞)
- 活用:conjugate
参考リンク
ラテン語およびロマンス諸語における,時制と相の考え方について:
古典ギリシア語:時制の全体像@Hellenike_tan - Togetter
http://togetter.com/li/522272
- 西欧諸言語の「時」には,(文章の)発話時,(文中で時を指定するために使われる)基準時,(文中の主文の行為が発生した)出来事時,の三つの概念がある
- 「時制」(tence)とは,「発話時と基準時の関係」を示す文法範疇。話者からみて文そのものが時間軸上でどこにあるか。
- 出来事時と基準時の関係を示すのが「相」(aspect)という概念。文の中で,指定した基準時刻から見て,ある行為が完了しているか,継続進行している(未完了)か,完結している(アオリスト)か
- 古典ギリシア語の動詞の時制幹は基本的に相によって区分され,「現在」「未来」「アオリスト」「完了」の4種のうち「未来」以外は「相」
- ラテン語の場合は,過去時制・現在時制・未来時制の3時制と,未完了相・完了相(完結相を包含)の2アスペクトの組み合わせが「時」を示す
- スペイン語の場合は,「点過去」は基準時を現在にとる完結相。「線過去」は,基準時を過去にとる未完了相
文法(5) 時制とアスペクト:かくの如く、時は流れる
http://zeta1645.blog41.fc2.com/blog-e...
- ラテン語の時制6つのうち,現在・未来・未完了過去(半過去)の3つを除いた残りの3つ,完了・未来完了・過去完了は完了時制というカテゴリ
- 継続しているか・完了しているかの違いは,厳密には時制ではなくアスペクト。ラテン語では時制とアスペクトが混在している
ラテン語語尾変化まとめ - Weiteres Wissen
http://d.hatena.ne.jp/kzhrtnm/2010111...
- 相:ある行為がどのような状態か。英語の現在完了は完了だけでなく,継続や経験も担っている
- 未来完了時制を前未来とも呼ぶ
196 英語の動詞認識 - 翻訳講座道中記
https://sites.google.com/site/honyaku...
- 法:インド・ヨーロッパ語族(IE語族)では「出来事」についての認識が他の諸言語と根本的に異なり,現実の出来事(直説法・叙実法)と,現実には起こっていないが心の中で想定している出来事(仮定法・叙想法)を明確に区別する。文法用語でmood(法・叙法)
- 英語はIE語族中では異端というか特殊であり,現代英語ではテンスをずらすことによってsubjunctive moodの非現実性(現実離れした語感)を表現
- 態(アスペクト)は「コト」の影響力の方向性を示す
日本人のためのラテン語
http://www003.upp.so-net.ne.jp/NAMBOK...
- 態:他動詞の場合は6階層,自動詞の場合は5階層の構造を1語の中に圧縮。態という階層は他動詞の場合にしか存在しない
- 法:事実法(Factive Mood):話し手が表現対象を「事実だと思っている」,反実法:(Fictive Mood)「事実だと思っていない(事実かどうかの判断を留保している)」,命令法(Imperative Mood):「現在は事実ではないが,事実にしたいと思っている」
Beginners' Guide to Tenses of Latin Verbs - The Tenses of Latin Verbs and More
http://ancienthistory.about.com/cs/la...
- Tense refers to time. In Latin, there are 3 simple and 3 perfect tenses, a total of 6, and they come in both active and passive forms.
- Imperfect means incomplete or unfinished. When translating an imperfect verb, the simple past tense sometimes works. Other times, "was" plus an "-ing" ending will convey the incompleted past action.
過去時制に関連した,ロマンス諸語の話題:
スペイン語文法ノート/「点過去」と「線過去」の時間
http://www.rondely.com/esp/gra/tense.htm
- まずその文章中でどの出来事に「時間の中心」を持ってくるかを考える(基準時,前提となる)
- 時間差を持って起こる2つの出来事を表現する場合,時間の基準を置いた事柄に対しては「点過去」を使い,もう一方の出来事には「線過去」を使う
- 点過去は「絶対時制」であり任意の過去の絶対的なメインの時点。線過去は「相対時制」であり基準時に対して関連するサブの時制
スペイン語・フランス語比較
http://nishidanishida.web.fc2.com/mul...
- 完了した過去についてはフランス語は単純過去(近年では複合過去),スペイン語では点過去が該当
- 未完了の過去についてはフランス語は半過去,スペイン語では線過去が該当
スペイン語の線過去(preterite)をどう解釈すべきですか? | 外国語のQ&A【OKWave】
http://okwave.jp/qa/q879963.html
- 単に過去に起こったことを表す「不定」の過去の呼び方=不定過去、点過去、単純過去、瞬時過去
- 不完了な過去の呼び方=半過去、線過去、継続過去
過去時制 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8...
- ラテン語の完了現在形はロマンス語の単純過去(遠過去)形に、未完了過去形は半過去形・線過去形になっている
完了形 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%8...
- ほんとうは「完了相」であり,現在・過去・未来等の単純時制と組み合わせた「複合時制(いわゆる完了時制)」として扱われる
- 英語の完了形は"have+過去分詞"で表され、時制に応じてhaveが変化
- 中国語には文法範疇としての時制はなく、「了」は基本的には完了(または完結)相。文末に付ける語気助詞の「了」は、変化した結果あるいは現在の状態を強調
ラテン語についてもう少し - 猫も歩けば...
http://d.hatena.ne.jp/r_kiyose/200710...
- ラテン語では単純過去形=アオリストも兼ねる
- 語順については自由というのがラテン語の特徴だが,「標準的な語順」はあった。主語(主格)が最初で、動詞が最後。形容詞は後ろから係る。
- ラテン語で「言文一致」が達成された時点から古典期開始。古典期開始時から民衆ことばと書きことばの分離が始まり,「書きことば」が現在「ラテン語」として残る。「民衆ことば」はロマンス語に発展
分詞や動名詞・動形容詞に関する話題:
ラテン語 | 外国語のQ&A【OKWave】
http://okwave.jp/qa/q2315379.html
- 動形容詞=未来受動分詞。[〜されるべき、〜されて当然、〜されるはず]の意。動詞語幹+nd-
現在分詞と完了分詞 - Hinemos amo!
http://d.hatena.ne.jp/nisuseteuryalus...
- 分詞は名詞にかかる「形容詞」(修飾語)
- ラテン語の文章では、現在分詞や過去分詞が名詞と折り重なって「〜している(〜された)何々が、〜している(〜された)何々を、どうして、こうして…」という、主語と目的語が重たい文章がよく出てくる。できるだけ一文に意味を詰め込もうとしている感じ
ラテン語の動詞の「目的分詞(スピーヌム)」 てどんな時使うのでしょうか? (ま...
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/...
- 動作の目的を示すために使う
ラテン語入門(第12講)
http://www.f.waseda.jp/tokuyam/07lat....
- 目的分詞は副詞的に用いられる
31.2b動詞的形容詞 Verbal Adjectives:初歩から学ぶ本格的な古典ギリシャ語講座
http://classicalgreek.web.fc2.com/gre...
- 動詞的形容詞はラテン語のgerundive(動詞状形容詞: 「…されるべき」という意を表す)に相当
ラテン語(lingua Latina) > ラテン語の文法(grammatica) > 特に注意すべき構文
http://www.lingua-latina.org/LL_2D_3.php
- スピーヌム、ゲルンディウム、ゲルンディーウゥム
動名詞 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%9...
- 英語では,-ingの動名詞は過去の出来事,to - の不定詞は未来の出来事を指すという違いがある
副島隆彦の論文教室
http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/fil...
- ラテン語では不定詞が名詞として使われる場合は主格と目的格の二つだけで、その他の場合(たとえば属格)は動名詞が担当した
その他の文法(用語や接続法など)に係る話題:
フランス語学習館: コンセプトその2:文法用語をなるべくラテン語の文法用語に合わせる
http://www.fr-manabu.net/a02b.php
- 本来,ロマンス言語は文法的に互いによく似ているため、一つをマスターすると他をマスターするのに役立つ
- しかし日本の文法書ではラテン語とロマンス各言語の文法書が、お互いに勝手な文法用語を採用しており、ロマンス諸語の文法的な類似性が見えづらい。例えば「半過去」「大過去」などは日本独自の用語
ラテン語をちゃんと勉強し直してみよう(4) 〜 第一活用動詞能動態|Castelli in Aria
http://ameblo.jp/sogni-chimere/entry-...
- ラテン語の時制は本によって名称がバラバラ
ラテン語に条件法がないというのは本当でしょうか? - あなたの疑問をみんなで解決 まぐまぐ!Q&A
http://www.mag2qa.com/qa2703449.html
- 条件法はなく,接続法がある
条件法に関する質問:ラテン語から受け継いだのではないの? - 外国語 - 教えて!goo
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/2703463.html
- ラテン語の接続法および古典ギリシア語の接続法・希求法から,ロマンス諸語の条件法へ
ラテン語の文法2 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A...
- 動詞変化の一覧表
Latin verb amo conjugated in all tenses.
http://www.verbix.com/webverbix/go.ph...
- amareの全活用表
ラテン語現在分詞
http://www.kitashirakawa.jp/taro/lati...
- 変化表
不定詞 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8...
- 主語の人称、単数、複数などに「限定」されず,活用しないことから,不定詞と呼ぶ
- ラテン語および古典ギリシア語の文法学者は,不定詞を伝統的に法の一部とみなしてきた(不定法)。現在では「不定詞」の訳語が定着
古フランス語文法便覧
http://www5b.biglobe.ne.jp/~coucou/fr...
- 古典ラテン語における一人称単数 -o は、8世紀より無音化
関連する記事:
ラテン語文法の暗記表: 動詞の現在変化 活用パターンの覚え方
http://language-and-engineering.hatenablog.jp/entry/20101107/p1
ペルシャ語文法の入門:動詞の活用
http://language-and-engineering.hatenablog.jp/entry/20090502/p1
スペイン語を使うためのリンク集 (辞書や翻訳ツール,あいさつ・旅行会話から文法まで)
http://language-and-engineering.hatenablog.jp/entry/20120901/LearnAndUseSpani...