SEの時間術 〜 きょうの帰社時刻を決めるアルゴリズム
エンジニアの時間の使い方に関するシリーズ記事。
SEの生活中でどのようなライフハックの原則やTipsを適用できるか,場面ごとにまとめたもの。
今回は,ズルズルと長くなりがちな帰社時間について。
帰宅が早いなら早い,遅いなら遅いで,毎回思い切ってメリハリをつけて行動できたら能率も上がるだろう。
そこで,「きょうは何時に帰るか?」という決定を下すためのアルゴリズムを考えてみた。
(記事末尾にソースコードもどきがあります)
上から順に条件分岐という事にする。
(1)ストレスが重くて,心の状態が耐えきれないほどになっているか?
→ため過ぎて壊れてしまう前に,時間を取って癒す必要がある。早めに帰宅。
心のシグナルを無視してはいけない。
ストレスはバケツによく例えられるが,バケツがあふれる前に,小出しでストレスを発散できたらベストだ。
バケツが重くなってしまったら,その事を無理して否定しようとせずに休養を取った方がよい(まじめな人ほど「まだまだ頑張れる」と言う)。
この回復のためのアクションをためらってはいけない。のちのち,取り返しのつかない事態にならずに済む。
参考:
ウサギとカメの話は長期戦で逆転する
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/C...
カメのように休息をとらずに頑張り続けては,いずれ限界が来るはず。
仮に,再試合やゴールの延長をすることになったらどうでしょう。カメはくたびれて動けず,昼寝で十分に休息をとったウサギの圧勝です。
(2)時期的に,プロジェクトの序盤か? 何か不慣れだったり,見積もれていない物が存在するか?
→全容が見えていない段階では,大きな見積もりミスをして後に影響しがち。先が見えてくるまではがんばろう。
プロジェクトの時期を大きく分けて
- 序盤,
- 中盤,
- 終盤(納期前)
とする。
納期前に残業させられるかわりに,序盤に進んで居残ろう。
期間の終わりではなく,期間の初めに,目一杯自主的に時間をかけるということ。
一定量のペースで作業していれば,終盤になるほど不測の事態が生じ,やる事が増えてくるのはあたりまえ。
「水平線」のような形で一定量で済むと思っていたものが,けっきょく右肩上がりになってしまうわけだ。
なら,前もって,最初の時点でその負担を減らしておけばいい。
単に「作業量が終盤から序盤に移る」というだけの事ではない。
メリットは,序盤の時点で全容を見渡す事によって,早期に再見積もりができるということ。
予算・人員・時間の面で,プロジェクトの予定を再調整できるかもしれない。
もし実際のリソースの調整ができないとしても,「早めにやっておかないとまずいんだな」という事が明るみに出るから,チーム内の意識は全く変わる。
こうする事で,終盤の殺人的な忙しさはかなりの程度緩和できるのだ。
参考:
オーバーコミッション:仕事を先送りする脳のからくり
http://lifehacking.jp/2007/10/overcom...
- 「今日」に比べて「一ヶ月後」の方が時間に余裕があるだろうと常に信じる傾向
- 思うほど未来には時間がないかもしれないのに、未来にむけて仕事をオーバーコミットするという傾向
(3)きょうは計画済みのプライベートの予定がある日で,なおかつ,やるべき事が終わっているか?
→ズルズルと居残らず,メリハリを付けるのが大事。やるべき事をやったら,「きょうはお先に失礼します」と言ってとっとと帰ろう。
(※さりげなく「きょうは」を強調するのを忘れずに)
カットオーバー前や障害発生時など,帰社時刻を自分でどうにもコントロールできない時だってある。
そういう日を「山」とするなら,まだ「谷」にいるうちに,自分をケアしておくための時間を確保しておく事が必要だ。
山がいつぐらいだから,今週は谷にしておこう。・・・こういうのを「メリハリをつける」と言うのだろう。
週単位・月単位・曜日単位で,先(=つまりプロジェクト進捗)を見越して,自分のスケジュールに山と谷(休養)の切り替えを施すわけだ。
「いつも山」では物理的に死ぬし,逆に「いつも谷」ではいつか社会的に死ぬ。
上記のようにメリハリをつけられる人は,計画的にプライベートを満喫しつつ仕事も全力で取り掛かれるはず。
参考:
The Now Habit (3) なぜか仕事ができる人の共通点「罪悪感なしに遊ぶこと」
http://lifehacking.jp/2007/08/the-now...
- 計画的に生活に遊びとレジャーをとりいれている人は、そうでない人に比べて大きな仕事を能率的にこなせる
- 逆に仕事で自分を追い詰める人は,遊んでいると罪悪感を感じてしまうので、遊びの内容も中途半端
(4)職場で自分自身の信頼を培う必要を感じているか?
→頑張っている所を見てもらう。チームの士気も考える。
すべての人が残業不要論を受け入れている状況であったとしても,理論通り進まない事もある。
「帰りづらいのでズルズル…」が常態化するのはまずいが,現実問題として,それと知りながらチームメンバーの士気を落とすような行動はやはり控えたい。
また入社直後や,失敗したあとのフォローが必要な状況など,信頼を培う必要のある特定の時期には,特に時間を割く必要があるだろう。
日本人男性の2005年平均就業時間の統計などを見ておくとよいかもしれない。
http://tori-s.at.webry.info/200604/ar...
・20〜24歳 男〜週41.7時間 女〜週38.0時間
・25〜29歳 男〜週48.0時間 女〜週39.8時間
・30〜34歳 男〜週49.9時間 女〜週36.9時間
・35〜39歳 男〜週50.3時間 女〜週34.3時間
・40〜54歳 男〜週48.8時間 女〜週34.3時間
この数値を見ると、特に30歳代男性が働かされていることが分かります。労働基準法上では、労働時間は「週40時間以内」と定められています。それを考えると、「週40時間」は夢のまた夢で、現状では毎日平均2時間くらい残業するのが「当たり前」となっているようです。
もちろん,まさにこういった長時間労働から人々を解放するためにシステムを作るのがSEなのだけども…*1
(5)残っているその仕事は,難問か? または,明日でもいい仕事か?
→帰ろう。今取りかかっても,ろくな進捗はないので。
上の通りで,自分のバイオリズムに謙虚になろう。
難しい課題や大きな仕事をこなせるようになるために,現場で実務経験を積むことは確かに大切だ。
しかし,わざわざそのために残業時間帯を使う必要は必ずしもない。
定時後の職場に居座り続けても,SEとしての自分の正味の単価が上がるわけではない。
自分を成長させるための「時間投資」として,早々と帰社して例えば自宅で本を調べる方が効果的ならば,そうした方が実務面でもよい選択だろう。
参考:
初心者SEの心得 10ヶ条
http://www.page.sannet.ne.jp/yamato99...
9. あともう少しで終わるなら明日やれ!
- 帰り際の最後の作業でミスったら、結局それまでの仕事がパー
10. 分からないなら、明日考えろ!
- 椅子に座って考えて分からない事は、椅子に座り続けても分からない
まとめ
if( "心が重い" ) { 人目を気にせず早く帰ってリフレッシュ; } else if( ( "今" == "プロジェクトの始め" ) or ( "不慣れ・不透明な物が存在" ) ) { 自主的に居残り,見積もりを確実にする; } else if( "今日" == "計画済みのプライベート日" ) { メリハリを付けるためにとっとと帰る; } else if( "職場で信頼感を培う必要がある" ) { 国内平均をちょっと意識しつつ頑張る; } else if( ( "急ぎではない作業が残った" ) or ( "難問が残った" ) ) { 下手に手をつけないで退社(ベターな時間投資をする); } else // default { 山と谷のスケジュール観に従う; }
この記事の内容は,新しいTipsを発見するたびに随時更新されます。
*1: 追記: http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081029/318095/?ST=career&P=2 20代ITパーソンの平均就労時間は,週49.1時間 という調査結果