私が実際に目にした,利用されている抗うつ剤と,その働くメカニズムに関するメモ
この記事では主に,脳科学や,生化学的な情報をメモする。
それと同時に,万一の時の医療面でのヒントとなる情報も記載する。
なぜ,抗うつ剤について知っておくべきなのか?
IT業界に限ったことではないが,
ストレスから,うつ病などの精神疾患を患うようになる人は多い。
数が多いため,自分の職場の同僚や友人が,そういった病気で苦しむ場合もある。
彼らは,
- ストレスを口にできず,治療を受けないままということもある。
- 逆に,治療らしきものを受けているのだが,薬漬けになってしまい潰れる,というケースもある。
私は,両方の人々を知っている。
医療に関し,素人が生半可に口を出すと危ない。
とはいえ,こういった病気で苦しむ友人のために,医療面での基礎知識を知っておくと,役立つ場合もある。
- 治療を受けないまま苦しんでいる人には,治すための具体的・現実的な方法があることを知ってもらえる。
- 誤った治療を受けている人には,薬の副作用によってかえって悪化していないか,などをちゃんと調べてみるようにアドバイスできる。
というわけだ。
下記には,うつ症状に対して処方されている薬剤のうち,代表的なものをメモしておく。
ただし,私の知人が実際に服用している,名前を聞いた事のある薬だけである。
これを見れば,あるいは見てもらえれば,心の病を抱えた人に,
適切な治療を受けるよう助けになることができるだろう。
薬の仕組みや,感情の浮き沈みの科学的な仕組み・原因が分かるので,
治療に対する抵抗感を減らしやすくなり,
さらに効き目をよく理解したうえで薬を服用してもらえるからだ。
例えばカフェインをあまり勧めないように気配りするなど,ちょっとしたことでも役立つ,はず。
前提となる知識
抗うつ剤を理解するための生化学的なキーワードは,基本的に
- セロトニン
- ノルアドレナリンとドーパミン
の,2タイプの化学物質(神経伝達物質)である。
これらが神経間でよく伝達すれば,気分が良い。
伝達が悪ければ,気分が沈み,うつ状態を経験する。
また,これらとは別に,不安状態を解消するための抗不安薬というものもある。
「うつ状態」と「不安」は,別なのである。
抗不安薬に含まれる化学物質は
- ベンゾジアゼピン系
である。
不安な時に,この物質を取り入れると,精神が安定する。
こういう働きを持つ薬が,精神安定剤である。
つまりここでは,精神の安定とは,不安の解消を指しているのだ。
これらの化学物質の量が適切になるよう,薬が体内でサポートする。
というのが,おおざっぱな説明だ。
以下は薬のリスト。
トレドミン
安全性の高い,抗うつ剤。
セロトニンと,ノルアドレナリンの伝達を助ける。
効き目は早い。副作用が少ない。
SNRIというカテゴリの薬では,国内初。
注意点
- 食後に飲むこと
- アルコールを併用しないこと
- 服用を突然にやめないこと
ミルナシプラン:トレドミン
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se1...
- 悲観→前向き,落ち込み→意欲,不安や緊張をほぐす。
- ノルアドレナリンの増加は「意欲」を高め、セロトニンの増加は不安感をやわらげ「気分」を楽にする
- うつ病の主要薬として広く処方。効果発現が比較的早く、抗うつ作用も強いほう。
- 空腹時に飲むと吐き気が生じるので,食後に飲むこと。アルコールを併用すると副作用が出るので注意。また,若い人にはかえって悪い衝動を引き起こすおそれがあるので注意。
- 症状がよくなってからも、再発を防ぐために,半年〜2年くらいしばらく少量を続ける
トレドミン 効果・副作用・離脱症状
http://www.atmosphericaid.com/
- 憂鬱な気分を和らげ,意欲を高める
- 服用を急にやめてしまうと、うつ病の症状が悪化したり、離脱症状がおこる。なので,少しずつ減らしていく
トレドミン(SNRI): うつ病治療 お薬辞典
http://utubyoukanja.seesaa.net/articl...
- 国内で初めて認可されたSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬,Serotonin-NorAdrenalin Reuptake Inhibitors)
- 「パキシル」に比べ,重度のうつ病に効きやすい
- 副作用は個人差
ミルナシプラン - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9...
- 商品名トレドミンとして旭化成株式会社とヤンセンファーマ株式会社から出荷
- 脳内のセロトニンとノルアドレナリンの再取り込み(吸収)を阻害する。これにより、脳内のセロトニン・ノルアドレナリンの濃度が上昇し、うつ状態が軽減
ソラナックス
安全性の高い,精神安定剤(抗不安薬)。
ベンゾジアゼピン系。
抗うつ作用もある。
リラックスさせる神経に働く。
副作用は少ないが,眠気を催す。
注意点
- 別の薬との併用に警戒
- 服用を突然にやめないこと
- 安易に飲まず,服用量を守る。漫然と飲み続けず,徐々に減らす
- 眠気・集中力の低下。運転しない。
- アルコールを併用しないこと
アルプラゾラム:コンスタン,ソラナックス
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se1...
- 不安や緊張をほぐし,おだやかな心,落ち着き,リラックス。
- 脳のリラックス系の神経受容体「BZD受容体(ベンゾジアゼピンの受容体)」に結合することで、リラックス系の神経を活性化
- 精神安定剤(マイナートランキライザー)=抗不安薬=心身安定剤
- 安全性が高く、耐性や依存も少ない。だが,急に飲むのをやめてはいけない
- 別の薬と併用すると,強く効きすぎたり、副作用がでやすくなる
ベンゾジアゼピン(benzodiazepine) - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9...
- 不安や興奮などを抑制する働きを持つ物質。ベンゼン環、ジアゼピン環から構成
- BZD受容体にベンゾジアゼピンが結合→GABA受容体が活性化→鎮静作用(中枢神経の信号の流れを抑制)→不安や興奮を抑制
- ベンゾジアゼピン受容作用を利用した薬をベンゾジアゼピン系と総称。主に睡眠薬や抗不安薬に利用
ソラナックスの効果と安全性
http://incant.purits75.com/
- 眠くなる事が多い為、睡眠補助剤として使われることも。肩こりや腰痛をほぐすために使われることも
- 抗不安薬における血中濃度半減期=血液中に一番濃度が高くなってから、半分の濃度になるまでの時間=効果が続く長さを比較するために用いられる尺度。短いほど「抜けの良い」薬。ソラナックスは14時間
ソラナックス
http://www.naoru.com/solanax.htm
- 飲酒で作用が増強
- 過敏性腸症候群の治療にも使われる
デパスとソラナックスの違い - メンタルヘルス - 教えて!goo
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/1633788.html
- ソラナックスのほうが作用時間が長く、抗鬱的に強く作用
- 抗不安作用としてはデパスのほうが強い。ソラナックスは中程度の作用、デパスは作用が強い
- デパスは胃潰瘍のストレスなどにも処方される
ソラナックス
http://zusu.net/mentalhealth/solanax/
- リラックス系の神経を活性化し、気持ちを落ち着ける
- 動悸を止めたり,テンションをあげたりという体験例
- ダラダラと長期服用するのはお勧めできない
デパス
抗不安薬だが,抗うつ作用もある。(この点はソラナックスと同じ。)
作用が「強く短い」ので,頓服の用途に向く。
睡眠薬ではないが,鎮静作用が強いので,睡眠薬としても使われる。
安全性は高い。
デパス/エチゾラム
http://zusu.net/mentalhealth/depas/
- 精神神経系の薬の中で,デパスは最も有名と思われる
- デパスというネーミングはdepression(うつ)をpass(パスする)という英単語からという説もある
- リラックス系の神経に作用し,疲れた脳に落ち着きを取り戻す
- 睡眠薬ではないが,睡眠薬代わりにも使われる。鎮静作用が高いため。睡眠薬として売り出されているレンドルミンよりも,入眠作用がよかったりする
- 抗うつ効果もあるので,副作用が多い抗うつ剤を嫌う医師が,抗うつ剤代わりに処方したりする。一錠で何度も美味しいところがあるという,万能的な存在。名薬。
- マイナートランキライザー(抗不安薬)としての作用がかなり強く、血中半減期は6時間以内で持続時間が短い
エチゾラム:デパス
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se1...
- チエノジアゼピン系。作用的には、ベンゾジアゼピン系とだいたい同じ。リラックス系の神経受容体「BZD受容体」に結合する点も共通
- 同類薬のなかでは、作用が強いほう。筋肉をゆるめる作用も
- 副作用が少なく安全性が高いので、各診療科でいろいろな病気に幅広く使われている。ある症状にうつ症状が伴う場合など。
リフレックス
抗うつ剤。
従来の薬とは違う,新しい仕組みを使って,セロトニンを直接増やす。
飲むと眠くなるので,寝る前に服用する。
効果が長い。
リフレックス
http://zusu.net/mentalhealth/reflex/
- 従来の抗うつ剤とはちょっと違った作用順序。「セロトニン放出推進」=直接セロトニンを放出する部分に働きかけてセロトニンを出させる。
- 従来の抗うつ剤は,まず脳をセロトニン・ノルアドレナリンが不足した状態にさせ(再取り込みポンプの阻害)、脳内に危険信号を発出して、無理矢理セロトニン・ノルアドレナリンの放出量を増やして、神経の働く状態を良くする,という仕組み。
- 日本では2009年から利用可能になった
- 即効性に優れ,すぐに眠くなる
- 副作用が少なく,軽症鬱の患者には、リフレックスの評判は良い。重症患者にはあまり評判がよくない
ミルタザピン:レメロン,リフレックス
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se1...
- ノルアドレナリンとセロトニンの遊離量を増やし、神経の働きをよくする
- プラセボを使った臨床試験で効果が認められた点で,国内初の抗うつ剤
- 持続性があり,1日1回就寝前の服用。眠くなる。
- 特異な副作用として「セロトニン症候群」を起こすことが。他の薬との併用に注意
ミルタザピン - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9...
- 四環系抗うつ薬。ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSA) というカテゴリ
- 短時間で効果が発現し、効果は持続的
- MSD(旧シェリング・プラウ)からレメロン、Meiji Seika ファルマからリフレックスという商品名で販売
- SSRIやSNRIとは異なる作用機序。従来の再取り込み阻害とは異なり,セロトニンとは別の神経伝達物質に対して取り込みを阻害する(=アンタゴニストとして働く)。そうすることによって,セロトニンやノルアドレナリンを増やす
レンドルミン
睡眠導入剤。
睡眠薬としての効果が短いので,寝つきを良くするために使う。
副作用が少ない。
その分,効き目も強くはないので,軽い不眠症などに使う。
ブロチゾラム:レンドルミン
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se1...
- 脳の神経をしずめて,自然な眠りに誘う。
- 一時的な不眠症状に適する
- 持続時間が短時間。翌朝の眠気や不快感も少ないほう
- 別の薬と併用すると,強く効きすぎたり,副作用が出たりする。飲酒もNG。カフェインも効果を弱めてしまう。
レンドルミン
http://zusu.net/mentalhealth/lendormin/
- 最高血中濃度時間が1.5時間という、つまりは作用時間が「短時間型」なクスリなので、翌朝にまで効果が持ち越してしまって、朝方に怠さが残るということが少ない
レンドルミン/ブロチゾラム
http://www.naoru.com/lendormin.htm
- 肝臓で代謝される。なので,アルコールを飲むと作用が増強してしまう。
〜ここには,新たなタイプの薬を処方している人を,私が身近に見かけ次第,薬の情報が追記されてゆく。〜
その他,抗うつ剤に関する知識
コーヒーの飲み過ぎはNG。特にセロトニンに対して。
抗うつ薬とカフェイン
http://utu.bent.jp/kusu/kahu.html
- 抗うつ薬とカフェインは相性が悪い
- カフェインを過剰に摂取→脳内神経系で興奮を引き起こす「アドレナリン」が放出→過多だと不眠症状やイラつき
- 抗うつ剤の大半は、アドレナリンの暴走を抑えるためにセロトニンを増やす
補足
まとめとしての復習:
うつ:
- キー物質:セロトニン(気分を楽に),ノルアドレナリン(意欲を高める),ドーパミン
- 悲観・落ち込み・意欲がない → 前向き・意欲がある
- 抗うつ剤
- 従来:再取り込みポンプの阻害により,間接的
- 最近:SNRI,セロトニン放出を直接推進
不安:
- キー物質:ベンゾジアゾピン(興奮や不安を抑制)
- 不安や緊張 → リラックス・落ち着き・穏やか,精神の安定
- 抗不安薬
- =精神安定剤
- =心身安定剤
- =マイナートランキライザー
薬剤の服用時に考慮すべき点:
- 離脱症状
- 血中濃度半減期。濃度が最大から半分になるまでの時間
- 大量のカフェイン:アドレナリンは興奮を引き起こす
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