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エジプト・コプト語を学習するための入門用リンク集 (辞書や文法解説サイトなど)


現在,エジプトではエジプト・アラビア語が話されている。

これはアラビア語の一方言である。



とはいえ,エジプトではずっと昔からアラビア語が使われていたのではない。

イスラムに征服される前は,ヒエログリフで表記する「エジプト語」が長期間存在していた。

これはハム語族に属する。(アフロ・アジア語族のハム諸語)



エジプト語は,数千年の間に大きな変化を遂げた。

その最終形態が,ギリシャ文字を使って表記される「エジプト・コプト語」である。


本稿では,そのコプト語の入門用の情報を掲載する。

古代エジプト語が発展し,その最終形態がコプト語

エジプト語の文字は,下記の順序で変貌を遂げていった。

  1. ヒエログリフ(正式な文字)
  2. ヒエラティック(神官が筆記に使った文字。ヒエログリフと同様に初期から存在)
  3. デモティック(さらに崩した簡易文字。前7世紀ごろに標準使用された)
  4. コプト語(ギリシャ文字がベース。アレクサンダーによる征服後)

絵文字(=象形文字)が書きやすいように草書体風に崩れてゆき,最後にはギリシャ語風の表記になった。

ヒエラティック
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9...

  • エジプト史の初期から存在
  • ヒエログリフとヒエラティックの2つの筆記法は1つの線上にあるのではなく、関連しあい、並行して発達したもの


デモティック
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8...

  • デモティックは古くは紀元前660年に使われているのが見つかっており、紀元前600年には古代エジプトでは標準的な書体となったと見られている。
  • 4世紀にはエジプトでもギリシア文字を基にしたコプト文字が使われており、デモティックはそれ以後使われなくなった


6. コプト語
http://www.geocities.jp/kmt_yoko/Scri...

  • マケドニア王国のアレクサンダー大王が紀元前332年にエジプトにギリシアの覇権をもたらしました。・・・紀元前3世紀中頃のハイデルベルク・パピルス114には、ギリシア文字で転写された口語のエジプト語の最古の例があります
  • 西暦紀元のエジプトの書記たちはギリシア文字の大文字の大部分と2〜3の小文字を採用しました。それらはエジプト語には現れるけれども、ギリシア語には現れない音を伝えるために、デモティックからの文字を含みました。
    • 古コプト語と呼ばれるこのアルファベット化の段階で、新しいアルファベットのギリシア文字はデモティックの借用文字と組み合わされました

古エジプト語を解読するために,コプト語の音韻が役立つ。ロゼッタストーンとシャンポリオンが有名

音韻の面では,ヒエログリフ(聖刻文字)が表音文字ではなかったために,古代エジプト語の正確な発音を知ることはできない。


そのため,古代エジプト語の発音を復元するためには,

王名(カルトゥーシュ)などの固有名詞を除くと,かなりの部分を後代のコプト語の知識に頼って推測するしかないのである。



エジプト語の解読については,あのロゼッタ・ストーンを解読したシャンポリオン氏の功績が著しい。

シャンポリオン氏の生い立ちを調べればわかるが,彼も若いころは多数の古代語に関心を示した。


彼がロゼッタストーンを解読するための最終的なひらめきは,

コプト語と古エジプト語との音価の対応に基づくアイデアだったのである。*1

古代資料を正確に解読する上での,コプト語の重要性が理解できるのではないか?


※ちなみに,ロゼッタ石の碑文のギリシャ語本文は,下記URLから閲覧できる。
http://el.wikisource.org/wiki/%CE%A3%...


コプト語の方言について

コプト語の方言としては,

  • サヒド方言(テーベ方言)
    • コプト語を母語とする著述家のほとんど全てが、この方言で記述した
    • コプト人以外の研究者がコプト語を学習する際に学ばれる方言
  • ボハイラ方言
    • 9世紀初めになるとボハイラ方言の勢力が強まり、14世紀にはサヒド方言にとって代わった

等の数種類が存在する。

エジプト語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A...

  • コプト語は17世紀頃まで日常言語として使用する話者が存在していたが、それ以降はエジプトにおける日常語はアラビア語エジプト方言に完全に取って代わられた。
  • ルネサンス期にはヨーロッパの学者達がエジプトを訪れ、母語話者からコプト語を習っていた程である。エジプトでも地方では、その後も数世紀の間は話し言葉として生き残っていた可能性がある。今日では、コプト正教会において典礼言語としてボハイラ方言が用いられている。
  • コプト語の表記に使用されたのはコプト文字である。これはギリシア文字に、ギリシア語にはないエジプト語の発音を表す、デモティックを素にした文字を加えたものである。


コプト・エジプト語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B...

  • 4世紀以降のエジプト語をさす用語である。この時期のエジプト語は当時のエジプトを統治していた東ローマ帝国の公用語であるギリシア語の影響を語彙・文法・表記などの面で強く受けており、この時代以降のエジプト語の言語体系にも基本的にそれが引き継がれているため、この時期を境にそれ以前のエジプト語と区別している。
  • 一般にコプト語と呼ばれているが、コプト語という独立した言語が存在しているわけではなく、あくまでもエジプト語の一段階である。
  • 現在では口語としてはほぼ死滅状態にある言語である。これは7世紀のイスラームのエジプト征服に由来している。
    • 当時のエジプト人は東ローマ帝国の統治下にあり、公用語のギリシア語とその影響を強く受けた日常言語としての初期コプト語を使用するバイリンガリズム状態にあった
    • イスラームの侵略と征服に依り, アラビア語が行政言語としてギリシア語にとって代わり、エジプト人は新たなバイリンガリズムに晒されることとなった。およそ3世紀 - 4世紀の間はコプト語を日常言語とし、アラビア語を公的な言語とするこの種のバイリンガリズム(時にはかつての公用語であるギリシア語をも加えたトリリンガリズム)が継続したが、次第にアラビア語が優勢となった


コプト語/Coptic
http://asahiculture-gaikokugo.com/cop...

  • ギリシャ語からの借用が大幅に行なわれているため、ギリシャ語の知識はコプト語読解の上で大いに役立ちます。
  • コプト語は、古代ギリシャ・ローマ世界をより立体的に把握するための重要な手がかりの一つ

コプト語の文字

下記に一覧表がある。

コプト文字
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B...

  • ギリシア文字に基づいているが、コプト語で用いられる音でギリシア語にはない音を表すために、いくつかの文字が追加されている。これらの文字はデモティックから取られている

コプト語の学習用のリンク

文字と発音

Learn Coptic Language
http://st-takla.org/Learn_Languages/0...

  • アラビア語(一部英語)で,コプト語の文字と発音を学べるサイト。


辞書と単語集

A Coptic Dictionary compiled by W. E. Crum (1939)
http://www.tyndalearchive.com/TABS/Cr...

  • 辞書を画像形式で丸ごと閲覧できる。コプト語→英語。


Vocabularium Coptico-Latinum et Latino-Copticum
http://books.google.com/books?id=1Y8C...

  • コプト語→ラテン語の辞書を丸ごと閲覧できる


Coptic/English Lexicon
http://www.coptic.org/language/Coptic...

  • コプト語から英語の単語への訳のリスト



コプト語文法

Contents
http://www.metalog.org/files/plumley/...

  • 英語


その他各種の有用な学習用リソース

Coptic Dictionary
http://www.lexilogos.com/english/copt...


読み物・著作

Coptic Books
http://moheb.de/Bible_books.html#old_...

  • コプト語のOTおよびNTをPDFでダウンロードできる。英訳付きの物も。


The Sahidic Coptic New Testament with Parallel Greek
http://sahidica.warpco.com/files/00in...

  • ギリシャ語の翻字と,コプト語のサヒド方言の翻字を並べて,NTの各書が読める。


John 1:1 and the Coptic Versions
http://nwtandcoptic.blogspot.com/

  • NTのコプト語サヒド方言のJohn1:1部分の本文が,画像で掲示されている。

発展

もしマスターしたら,観光地としてアイルランドのダブリン城の敷地内にある「チェスター・ビーティー図書館」にでも旅行するとよい。

コプト語のパピルスの貴重なコレクションがざくざく存在するので。

※しかし,展示されているとは限らないが。。。

Chester Beatty Library / Coptic papyri
http://www.cbl.ie/Collections/The-Wes...



*1:ヒエログリフ入門,六興出版,1988,p27より。